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ひかりにふれる

  • 執筆者の写真: カフェリヒト
    カフェリヒト
  • 2024年9月3日
  • 読了時間: 2分

更新日:2024年9月25日

yueni(ビーズ作家)

個展期間 2023年4月14日〜16日





考えてみると運命だった。 ビーズという素材のことを、

彼女はここまで好きになるとは、

自分でも思ってもなかった。

誰もいない暗闇に手を伸ばし歩くなかで、

ふと手ざわりを感じた、

ちいさなちいさな粒。

ビーズの世界に、

たちまち恋をしてしまったのだ。





幼い頃は、おもちゃのビーズが

大好きだった。

とりどりの色に塗りこめられたそれらを

手のひらにのせて、眺めたり、

並べたりして遊んでいた。

ただ大人になり、

ジュエリーをつくるようになってからは、

ビーズと言えばどこでも手に入りやすく、

誰もがつくりやすい素材、

というイメージに塗り変わっていった。

その思いを取り戻したのは、

古代の民族衣装に、

ビーズが使われていたのを見た時だった。

心を打たれた。

こんな技法は見たことはなかった。

信じられないほど小さな粒のひとつひとつに

穴を開け、通して、縫い込む、

プリミティブな装飾のかたち、ビーズに、

とてつもない夢と可能性を感じた。



それからは、誰に教えられるわけでも、

導かれるわけなく、

たったひとりでビーズについて、

どんどん掘り下げるようになった。

博物館にたびたび訪れては、

民族衣装に使われていたビーズを見て、

研究する。すると古代から身近でかつ

神聖な存在であることがわかった。

財産として、魔除けとして、お守りとして、

ステイタスの象徴として。

石と比べても、負けてない、

誇れる素材だとさらに思いを強くした。



つなぐ かざる みせる ビーズ BEADS IN THE WORLD 国立民俗学博物館図録

民族衣装はあまたの色のビーズを

使うことが多いけれど、

彼女は自分がつくるなら、

シンプルなものにしたいと思った。

古代にインスピレーションを得ながらも、

できるだけ今の時代の、

日々の装いにも合うように。

するとおのずと、

白一色で仕上げることが多くなった。



ドイツ語で光という意味を持つリヒトで

展示をすることが決まったとき、

パッと降りてきたかたちがあった。

星にも見える光のモチーフ。

ここが新しい場所であることも着想を得た。


はじまりの光。

はじまりだけど、新しい。

今だけど、根源的なもの。

そんなジュエリーを

つくりつづけていきたい、

そう改めて感じた瞬間だった。





取材・文  山村 光春


©atelier licht

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